「省スペースで、パートナーいらず」の商品づくりを追い求めるフィールドフォース。しかしもちろん、それだけにはとどまらない。プレーヤー個人ではなく、チームに向けた「痒いところに手が届く」商品も作り続けている。その発想と哲学に迫る第1弾は、チームを助けるネット類の開発だ。
河川敷で見かけた練習風景
主にプレーヤー個人に向けて、平日練習に役立つ練習ギアを主力商品としていたフィールドフォースが、最初に手掛けたチーム向け商品はバックネット5m×3mという商品だった。現在も改良を重ね、FBN-5030BNBとしてラインアップされている人気商品だ。

「河川敷のグラウンドを見回すと、バックネットどころか、何もないところで練習をしている選手も多い。ひとたびボールを逸らせば、延々と転がっていくばかり。これでは練習効率も何もありません」
社長の吉村尚記が当時を回想する。
「かといって、大掛かりなバックネットを持ち運ぶなんて不可能。でも、分解できる構造にして、持ち運び、その都度組み立て、自立するバックネットを作れたら、その悩みは解決します」
フレームを分解組み立て式とし、ネットをフレームに面ファスナーで固定、フレームから延びたロープを張り、ペグ打ちをして固定すれば、簡易バックネットが完成する。練習後は分解し、バッグに収容することで、持ち運びも楽にできるように──。
こうして誕生したのが、バックネット5m×3m FBN-5030だった。
「やがて、河川敷のグラウンドでも、FBN-5030をよく見かけるようになって、やはり需要はあったんだと、手応えを感じたのを覚えています」

バッティング練習でも使えるように
FBN-5030はヒット商品に。ただ、練習で使用される様子を見ていた吉村は、あることに気づいたのだった。
「ネットに向かって、バッティングをしている子が多かったんです」
ただ後ろに転がってゆくボールを防ごうと、その利便性だけを考えてつくっただけに、ネットに向かっての打撃練習は、FBN-5030の使用法としては想定外だった。想定外ゆえに、ネットへの打ち込み禁止を呼びかけていたわけでもない。実際、そのように使えないこともない強度はあったが、バッティングネットとして使う選手たちの様子を見て、吉村は発想を逆転したのだった。
「ならば、打撃練習で打ち込むことを前提とした作りにしよう、と考えたんです」

それまで、フレームにテンションをかけて、ぴんと張っていたネットに少しの「遊び」を持たせるために、固定用ロープをネットの角ではなく、少し内側から出す構造とし、ネットの下部は、地面に垂らす形のスカート状に。打球を「跳ね返す」のではなく、「受け止める」形にしたのだった。
こうしてバッティング練習で打ち込むことも前提に作られたバックネットは現在もヒットを続けており、さらに横幅を長くしたバックネット・ワイドFBN-7030BNも商品化されたのだった。
「裏方」だったネットが「主役級」に!
その頃すでに、個人向けの一人練習ギアとして、フィールドフォースの代名詞たる「トスマシン・オートリターン」はヒット商品として売れ続けていた。

オートリターンネットで重要なのは「打球を受け止める」こと。すでに、ここにFBN-5030の改良につながるヒントがあったのだ。「ボールを防ぐ」「ボールを跳ね返す」だけでなく、「ボールを受け止める」ための道具としてのネット。この発想により、従来、「防球ネット」として練習を補助するための、言ってみれば「裏方」的存在であったネットが、練習用のギアとして「主役級」に格上げされるための前段階に来ていたのだといえる。
この「ボールを受け止める」発想は、オートリターンネットのリニューアルにより、さらに進化する。
ネットを支えるフレームが、スチールからグラスファイバーに変更されたのだ。釣り竿や、棒高跳びのポールなどにも使われてきた、「しなり」による衝撃吸収を得意とするグラスファイバーポールと、フィールドフォースの衝撃吸収ネットが出会ったことで、その機能は、さらなる進化を遂げたのだった。

ボールを受け止めるためのネット
かつて吉村自らが社長コラムで説明しているが(→こちらとこちら)、西武ライオンズのために作成した「壁当て用の壁」も、ボールを跳ね返す壁という発想から逆転し、受け止めるための壁として作ったことから出来上がった傑作である。
さらに、重量のあるメディシンボールの壁当てをも可能にする「モンスターウォール」FKMP-2116BLKは、これらの機能を極めた、真骨頂ともいえる商品。ここでは、グラスファイバー製のフレームに加えて、ネット自体も網状のものに比べても、より衝撃吸収能力の高い、シート状のネットが採用されている。


「受け止める」ネットの集大成、全方位集球ネット
もうひとつ、「ボールを受け止める」ためのネットの機能を極めた商品がある。
「全方位集球ネット360°」FZHSN-360。ネットを十字状に重ねることで、360度、どの方向から来たボールも受け止めてしまおうという、画期的商品だ。

「思いつきは、練習でのフリーバッティングなんです」
吉村が、開発の経緯を説明する。
「よく見るのは、フリー打撃の時に、セカンドベースあたりに防球ネットを一枚、置いておき、外野でボールを捕った人が、そのネットに向かってボールを転がしたり、ゆるく投げたり、という練習風景です。外野にいる人は、言ってみれば、ほとんどボール拾いのようなものです」
そこで登場するのが全方位集球ネットの考えだ。
「その場所に、どこからのボールでも受け止めることができるネットがあれば、ボールを捕った外野手はネットに向かって投げることで、送球練習もできる。フリー打撃での守備が、ボール拾いから、意味のある守備練習に変わるんです」

使い方次第で、どんな練習も質が向上
FZHSN-360は一見、大掛かりな見た目に反して、組み立ては極めて容易。フレームはグラスファイバー製で、左右のテンションをほとんどかけずに下に垂らした、スカート状のネットがすべてボールの勢いを受け止めてくれる。さらにその下にあるシートはすり鉢状になっており、中央にはボールが落ちるための穴がある。トスマシンと組み合わせてオートリターンを可能にする、フィールドフォースのネットでは、おなじみの仕様だ。

言ってみれば、これまでフィールドフォースが各種ネットの開発で培ってきた構造の「全部入り」。これにより、どこから来たボールでも受け止め、下に置いたカゴに勝手に集めてくれる、万能ネットが出来上がったのだ。
「これがチームに一つあるだけで、練習効率は一気にアップしますよ」
捕るだけのゴロノックが、送球練習までできる練習に。捕るだけの外野フライノックが、中継プレーを意識した送球までできる練習に。ホームベースに置けば、キャッチャーの役割さえこなすポテンシャルを持っているのだ。

低学年の練習などではとくに、受ける側を意識することなく、思い切った送球ができるために、選手たちがゲーム感覚で、楽しそうに練習に取り組む姿も多く見られる。
また、フィールドフォースが小学校の児童を対象に行っている「投げ方教室」では、児童の輪の中心に全方位集球ネットを置き、グループごとに色の違うボールをネットに向かい、玉入れのように投げ入れるゲームも好評だった。
構造はシンプルな、この全方位集球ネット。それでも、一台何役なのか分からないくらい、使い方次第で用途が広がる、傑作商品といえるのではないか──。